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腑に落ちた出来事

更新日:4月25日

学生時代にそのような調律があることを知ってはいた。でも私にはピンとこないし、そんなピアノに出会ったこともなかったから、とっくの昔にその知識は頭の中から消えていた。

いや、もしかしたら出会ったことはあったのかもしれないけれど、その場ですぐ気付くほどの差ではなかったということかもしれない。

それか、単に私の耳が悪いかだ。


昨年12月にTone Momentum でのレコーディングの日、その立派な調律されたばかりのピアノを左手でポーンとD4を鳴らした。


私がいつも想像している音、今まで経験してきた音とはだいぶ質が違っていた。

何故?


そんな疑問を投げかける時間もなく、さまざまハプニングもありながらもレコーディングはとにかく着々と進められ無事に終わった。


その後2ヶ月間、何度も何度もプレイバックしengineer五島さんにそれぞれ要望を伝える。

特に4曲目のピアノイントロ部分、私のいつもの音とは違う感じで、他の曲も特にピアノ一人になった時、今まで経験してきた音の揺れとは違う、何と言って説明すればいいんだろう?と、ずっと心のモヤモヤでいっぱいだった。


空調のon, offで微妙に音がくるってしまったのかと思ったほど。

でもengineer五島昭彦さんの記録では音はくるっていないらしい。

ミックス段階での五島さんとのやりとりは、今思えば今までにない類の非常に興味深いものだったと思う。やりとり後半はこれでもか?という位、私自身面白がっていたように思う。


(あ!alto sax津上研太さんはというと、途中で「自分の音聴きたくない病」に陥り、まぁ後はほとんどピアノの音への疑問と二つの楽器の距離感に関することでもあったので、最終チェックを頼む時までこれから先は私に任せて下さい、とお願いした。その後最終チェックまでに一か月もかかることになるのだけれど)


そうしていく内に、曲ごとに音質が違うように感じていたこともある程度は解決し、バランス良く、サックスとピアノの距離感など数センチの要望にも対応していただき、作業は終わった。

何せ五島さんご自身も経験したことのない情報量だったらしく、今回ばかりは今までの何倍もの時間を割いていただいた。


楽器そのものの音質が曲によって微妙に違うのには変わりない。違いが軽減されただけだ。


しかしながら、今ではそれも一つの特性としてより愛着を感じるようになった。

2ヶ月間ずっと大きな疑問が私を襲い、悩んでいたことだけれど、今はスッキリしている。


何故なら冒頭にお話した、とっくに忘れていたこと、あー!これがそうだったんだと分かったからだ。


ここからはピアノの調律に詳しい方やピアニストには、取り立ててお話することではないのかもしれない。


半音の100分の1cent(1cent)で表すのだけど、中音域・高音域の3本の弦を、左から-0.5cent, ±0, +0.5centとユニゾンの開きをつける(0.5centだから半音の200分の1だ。)

もちろん−0.2 cent, ±0, +0.2 centだったり−1, 0, +1 の場合もあるんだろうけど、この日のピアノが何centだったのかは分からない。


とっくに頭から消えていた、ユニゾンに開きをつける調律をされたピアノに、私は初めて出会ったんだと思うと全てが腑に落ちた。

(けれど実は出会ってはいたのに、あの日、D4をポーンと鳴らしただけで感じるほどのユニゾンの開きではなかったということも考えられる。)


腑に落ちたところで、改めてピアノの調律にも詳しいあるピアニストにalbumを聴いていただいた。


やはり何か感じ取っていただいたようで、


平均律っぽいのもあれば、ちょっと古典調律っぽく感じるものもあり、4曲目などは半音の幅が何か違う感じに聴こえ、その分5曲目は平均律に聴こえると。



やはり4曲目に気付いてもらえた。

そして5曲目はというと、私が全曲5曲目と同じMIXにして下さいとお願いした曲でもある。

(結局それは物理的に無理な話だったのだけれど)

私は嬉しくて仕方がなかった。

やっと共有できたという安堵感と爽快感。


私がcent云々のことを伝えると、何とヨーロッパでは好まれる調律のようで、要するに好みの問題なんだけれど、アコーディオンなども、3段リードで真ん中と両側を開きをつけると、ミュゼットというシャンソンなどで好まれる、一音でも揺れる感じの音になるんだそうだ。この場合は3centとか、もっと開きを付けるとのこと。(えー⁈3cent⁈)



そして、ピアノだけになった時に、余韻が細かく揺れてるのがあって、これは平均律の揺れじゃないなと思われたそうだ。


(そう、私はこのピアノだけになった時の音にとても苦労した、というか、あくまでも好みの問題で、どう表現しどうしてもらえばこの揺れが軽減されるのか、MIX段階で一番考え、考えたところで録られている私の出した音は変えようがないんだろうな?などの思いが頭をぐるぐる回っていた。)


でもそんなこんなで、私の心の中は晴れ晴れとし、そういった意味でも貴重なアルバムとなった。研太さんも同じようなこと言っていたけれど、自分のダメな部分も個性として捉えられるようになった。


ここまではピアノの音に関して長々と記したけれど、CDPRESENT」はもちろんホールの特性を活かした良いアルバムだと思っている。


何よりTone Momentum津上研太さんのプレイは素晴らしく、DUO編成ということもあり、たっぷりと津上研太ワールド、Tone Momentumワールドを楽しめることは間違いない。自画自賛。


私自身のプレイに関して思うことは、ピアノが一人で弾いている部分より、サックスと一緒に音を出している部分の方が断然好きだということ、これは私にとって大きな進歩だ。


saxophonist研太さんのただでさえ(一言で言うならば)カッコいいプレイを、どうやったらよりカッコ良く聴かせられるか、それがこのDUOにおいての私の中での根本であり、それが実践できるように少しはなれた瞬間も垣間見れること、それが大きな進歩だ。

もちろん自分も主張しながらだけれど、ヒヤヒヤしながらも結構楽しんでいる。


ピアノが一人になる部分は、シーンとシーンの連結部みたいなものだろうか。

ピアノが一人になる部分があっても、それはソロピアノとは全くの別物だ。

そんな気持ちはこれっぽっちもないし、今そう思えるのも大きな進歩だ。


私としては2つの音が鳴っているところが楽しい。何度も言うけれど、ソロを取る研太さんと共に出している自分の音の方が断然好きだなって思う。良いコラボだ。


今回はいろんな意味で良い経験をさせていただいた。Tone Moentumの音楽のこと、サックスとピアノの音がブレンドする空間や環境のこと、ピアノのことetc.


しかしながら、Tone Momentumに於いての私の在り方に、まだまだ伸び代を感じ考える今日この頃。年を重ねても20代の頃の意気込みとちっとも変わっていない自分を、頭おっかしいんじゃないの?って思うことも多々ある。

変わったのは、あの若かりし頃の焦りみたいなものが全くなくなったことくらいだろうか。

「今」を大切に生きたいなって思う。


……………

albumPRESENT2025.05.21全国release


今後のTone Momentum

津上研太as小林洋子pf

ライブ日程(album発売記念含む)


🔸2025.05.29(Thu.)

中野Sweet Rain19:30〜


🔸2025.06.21(sat.)

成城学園前cafeBeulmans13:30


🔸2025.07.12(sat.)新宿Pit Inn 14:00


🔸2025.07.18(Fri.)新子安しぇりる19:00


🔸2025.08.10(sun.)

百合ヶ丘WADACHI18:00

guest高橋将eb


🔸2025.08.16(sat.)横浜エアジン19:00〜 guest高橋将eb




 
 
 

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