top of page
執筆者の写真yoko kobayashi

未来からやってきた男たち

更新日:2022年6月2日

前もって旅行計画を立てても、当日になると行きたくなくなることも多い厄介な性分だけれど、突然、無性に旅に出たいと思う朝がある。

そんな時、どこか旅へ、なんて一瞬よぎるも明日のことを考えると日帰りしかできないのが現実だ。


こんな日はCD聴いたり本読んだり、そうだ!しぇりるのまさこさんにお借りしている

ピアニスト南博氏の昔々の著書「白鍵と黒鍵の間に」を読んだりして、本日は面白く過ごそう、というふうに気持ちは落ち着いた。


「黒鍵と白鍵の間に」、これは南氏と親睦の深い津上研太さんに教えてもらって、以前その本の存在を脳にインプットしたはずだった興味深い文庫本。

やっと今頃読める。やっとまた好きなことができる時間も持てるようになったということだ。そんなことを考えていたら.......


ん?!研太さん?

あれ?そう言えば、今日あたりあの面白い集合体のLIVE告知を数日前にみたような?


下北沢路地裏の地下の小さな秘密基地!これはもう旅する気分だ。

以前「これは癖になってまた聴きにいきたくなるかもってことで、ヤバいなこれは」と記した通り、私の本日の旅は白鍵と黒鍵の間ではなく、急遽夢の中へ旅することとなった。


タイムマシン下北沢APOLLO号に乗ってタイムトラベル。

前回は石器時代へ旅したけれど、今回は違った。


2022.05.31 下北沢アポロ

津上研太as

石井智大vn

魚返明未pf

コモブチキイチロウwb

外山明ds


私が時間を旅するのではなく、この日は彼らが未来からやってきた。

まだ見ぬ世界、多分私がもうこの世にいない果てしなく遠い先の世界からやってきた。

タイムマシン無免許で操る津上研太氏率いるこのバンドの音楽は、ファンタジーへと誘ってくれるバンド。

ファンタジーといっても、笑いあり涙ありの超現実的ドタバタ劇場を遠い未来から美しく気品に満ちて運んできてくれる。

そんなバンド。

もう研太さんはクリストファー・ロイド演ずるドク博士か?!コモブチさんはマイケル・J・フォックス演じるマーティとも思えてきて、

LIVEが終わったらこのバンドは遠い未来に戻っていくのであろう新バック・トゥ・ザ・フューチャーAPOLLO版のようだった。


笑いあり涙あり超現実的面白ドタバタ劇場が、何故か美しく気品に満ちているのは、石井氏、魚返氏お二人のセンスのピカピカ感とうわべだけではない美しさの大きなプレゼント所以だ。この箱はまるでマトリョーシカ風である。



一曲目の確かスタンダード曲を覗いては、それぞれのオリジナル曲で展開された。

きっと未来から現在に旅立つ際に、皆でせっせと選曲されたのかと想像する。


研太さんはメンバー紹介で、ご自分も含めた4人を紹介した後に「みんな大好き外山明!」と紹介していた。

きっと影のボスなのだろうと思わせる、そんな面白さが特に色濃く表れたのが「スパイの人」?という外山さんの曲だった。

(この曲に限らず、全ての曲の面白さや雰囲気は、言葉で表現することは難しく、実際に聴きにいっていただくしかないのと、それぞれの演奏の素晴らしさはもちろん言うまでもないことであります。)



ほぼ演奏中無表情の外山さんはハットを被り、一点を見つめている。

聴こえてくる音から、「スパイの人」では、スティックが葉巻に見えてきた。


ハットを被り、無表情で一点を見つめ、葉巻を燻らす、

目を瞑って音に浸っていると、どうしてもドォっぷりと太ったマフィアのボスが脳裏に浮かぶ。

ところが目を開けると、そこにはあのスマートな外山さんが居て、そのアンバランスさも相まって、タイムマシンに乗ってやってきたこの面々は、このメンバーでしか在りえない音楽のトリックを届けてくれたような気がした。

この曲が「マフィアの人」ではなく「スパイの人」であることも勝手に納得する。



APOLLO を出て、下北沢の街並みも以前のような活気を取り戻しつつあるような気がした。目の前の景色が現実だ。

感動だけを置き去りにして、5人を乗せたタイムマシンは今頃どの辺りにいるのだろう?










閲覧数:30回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page