「NetteNix Special」@神保町 視聴室
音が聴こえ始めた途端に、私は深い海の底に引きずり込まれた。
ひゃー、先頭にかみむら魚、その後ろに古和魚と阿部魚が並び、その後ろにケン魚が、
上から見るときれいな菱形に位置して、泳ぎながらこっちに向かってくる。
しょっぱなから、そんなドロドロ・サラサラした美しさが強烈だった。
深海だけれど光が差しているそこは、4人でいや4魚でず~っと旅する神聖な場所だ。
形成している菱形は、時には線になり輪になり、様々形を変えて、一曲一曲というより
2set全部で旅の過程が見事なまでに構成された。
皆お魚さんにしか見えないのだけれど、かみむらさんの目は、普段は優しい目をされているが、演奏中だけはもう魚眼のようだった。
ギョギョギョ
かみむらさんは、座って吹くときも立って吹くときも、常に足をバタバタさせていた。
泳ぎのうまいお魚さんでもバタ足(とはちょっと違うけれど)ってあるのかって不思議に思った。
演奏中の頭の中を覗いてみたくなる。
吹いていないときは椅子に座って、微笑みながら右(阿部魚)見て左(古和魚)みて、後ろ(ケン魚)見て、
その度に素敵なポニテがクルンクルンするものだから、より一層指揮官としての風格が増していた。
かみむらさんのバタ足もポニテも、レーダーのような器官なんだ!
面白いな~、この4魚の音楽。
2022.07.19 @ 神保町 視聴室
「NetteNix Special」
かみむら泰一ts,ss 古和靖章gt 阿部真武eb 角田健ds
元々二人で始まったという「NetteNix」の相棒 guitarist古和さんは、どちらかというと不機嫌そうな表情で演奏するけれど、
とっきどき不意をついて観客を静かにフフフって唸らせたり(その最中も古和魚も不機嫌そうなギョう相)、
急に調子っぱずれなフレーズを奏でたり、私はもう志村けんにしか見えなくて笑いを堪えるのに苦労する。
もう「そうです!私が変なおじさんです!」って言ってるみたいなもの(笑)
スーツ着たら会社の管理職にも見えなくはない佇まい、音楽という鎧を身にまとい、NetteNix探求者に変身するのでありました。
作曲・編曲もとっても素敵なギ(ョ)タリスト。
ベーシスト阿部さんを前回聴いた時とは、この「NetteNix Special」では全然違うんだろうなって思っていたけれど、
な~んだか妙な雰囲気と面白さはやはり顕在だった。
だって阿部魚はエレキベーシストなのに、アケタの店に私のピアノソロを聴きにきてくれるというオモロい人。
木藤美咲さんというbaritone sax 奏者とDUOも聴かせてもらったけれど、ずーっと楽器を寝せて膝の上に乗せ、琴奏者ばりに弾き、
いや琴奏者だって楽器を膝の上には置かないし、実験室で実験見て聴いてるようでワクワクしたっけなぁ。目の前の光景と音楽が一つになってるみたいな。
阿部さんは若き化学者みたいなイメージ。やはり「NetteNix Special」の探求の旅には欠かせないでギョざる。
drummerつの犬さんが普通のスマートな紳士に見えるぐらいだから(笑)、他の3魚もいかに妙な音の摩訶不思議を発しているか想像していただけるかと思うけれど、
でもやはりつの犬さんのプレイは一貫してやんちゃな探究心旺盛なところが素敵だなぁって思う。
そうだ、最後に何の意味か、ケン魚は一番後ろから大量のシャボン玉を吹いた。??
やっぱり、ここは海の底だった。そして、ハハハやっぱりつの犬さんだった。
水泡は、水の泡となって消えていくのかと思いきや、ずーっとそれを目で追っていくと、二つずつがかみむら魚と阿部魚の頭にくっついた。
あー、この日の探求の終わりだ。
常に二つ以上の調性が同時に一つの曲の中で演奏されているようなNetteNixの音楽は、不安定なようで実に美しく、好奇心旺盛魚さながら、ちょっと遠回りしたりしながらも、
ある一定の距離を保って見事に泳ぐ色鮮やかなお魚さんたちの成せる技でした。
とても良いユニットであり、とても素敵な、濁りのある美しい音楽はとても魅力的です。
この濁りがたまらない。
NetteNix は、かみむらさんと古和靖章が立ち上げたユニットで、そのユニット名は彼らが尊敬してやまない2人の音楽家Ornette ColemanとBern Nixから付けられたという。 その偉大な2人の音楽家に影響を受け、単に受け継ぐだけではなく(いや、それだけでももう大変なことだけれど)、そこに留まらず更なる進化を求めて泳ぎ続ける凛とした魚影たちだった。 ギョエー。
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