10/15 小野健彦氏によるライブレポご紹介

【私の2021live.vol.59】 今日の速報徒然瓦版的投稿は長文必至のため、章立てにして行こうと思う。 ■第一章:ライブに向けて 今夜のライブの現場は、6/25以来の西荻窪・アケタの店。久しぶりの新宿駅では黄色の総武線への乗り換えもスムーズに間違えることなく、随分と早めに西荻窪駅に到着し、右見て、左見て色々と思案した結果、御神酒の河岸は、「焼き鳥戎・北口店」と決定。馴染みの焼き手・鈴木さんとの再会も果たせて、上機嫌でアケタへと足を進めた。


今夜のステージは、小林洋子氏(P)と吉野弘志氏(B)のDUO。 さて、ここで時計の針を少し戻して。 あれは昨年の梅雨時後の頃だったように思う。 洋子さんのFacebookに現れたPVに耳目を奪われた。


確かブリザードフラワー?をタイトルバックにして流れ来た余りにも儚いニュアンスを持ったピアノとベースのインタープレイ。

洋子さんにお聴きすると昨年1月に新宿ピットインで実況録音した吉野さんとのDUOだと言う。私は即座にこれは絶対「形」にすべきだと力説した。


その後他にも同様の書き込みが多くなされていたのだが、その後のコロナ禍突入により、それは結局陽の目を見ずに終わってしまうのかと思っていた矢先、このコロナ禍の中、ピッインミュージックのエンジニア・菊地昭紀氏や、アケタの店オーナー・明田川荘之氏/マネージャー・島田正明氏らの強力なサポートを得て、このプロジェクトが大切に育まれて、時期は未定ながら、近々aketa's diskから発売されるというニュースが洋子さんのFacebookから飛び出して来た。


やはり、そのライブの内容には演者もかなりの手応えを感じて、今般のリリースに漕ぎ着けたのだと言う。その意味で、今宵は異例ともいえるレコ発記念前祝いライブの趣向になる予定であった。

■第二章:演者も聴き人も驚きの現場 そんな経緯もあったため、アケタの店に着いて看板の「CD発売記念」のクレジットを見て、?となったのは言うまでもない。しかし、その後店内に足を踏み入れ、更に驚きの光景を目にすることになる。店内後方の丸椅子の上には謎の段ボールが。

島田マネージャーにお聞きすると、今日に間に合わすべくニューアルバムが100枚到着している、と。しかし、それらは未だ裸の状態で、空のプラスティックケースに裏ジャケ、盤、インナースリーブ、帯をセットしてビニール袋に入れてこれから組み上げて行くのだと言う。こうして今夜は、舞台上と客席後方レジ脇の島田さん定位置とでふたつの(ライブ)ドラマが同時進行して行くという驚愕の展開となった訳である。

■第三章:肝心の「音」 定刻の19時にスタートした今日のステージ。 洋子さんオリジナル曲〈3/4忙中〉を皮切りにS・リバース〈Beatrice〉を経由して、洋子さんオリジナルの三曲を並べて決着させた1stage。

その後のインターバル直前には、島田さんが今しがた組み上げたばかりの、当の演者本人も完成品を初めて見るシリアルナンバー1番が舞台へと無事届けられるという泣かせる場面にも立ち会うこととなった。

そうして続いての2ndステージでは、スタンダード曲〈Never let me go〉を洋子さん入魂のオリジナル2曲ずつでサンドし、最終曲にはアルバムタイトル〈Turn Circle〉(これは洋子さんの造語で、「輪廻転生や時は巡り再び」と言った人生観を投影したイメージ)を据えるという展開。

そんな充実した約2時間のステージ全体を通して、様々なテンポ、曲想の数々が供されたが、いずれも、お二人持ち前の強靭なタッチに支配された硬質な仕上がり。

しかし、同時にその力強さの内から柔らかく立ち上ってきた儚さと危うさの表情からは、このおふたりでこそ生み出すことの出来る創造性の深淵をまざまざと見せつけられることとなった。

2018年夏のシーン復帰以来、数々のエポックメイキングな舞台を踏んで来た洋子さんであるが、復帰以降初の登場となったここ古巣・アケタのピアノの椅子の座り心地と鍵盤のタッチの感触は、途方もなく感慨深いものであったに違いない、

そうして、直ぐ横には、かつて自らが命名した「音曲の貴公子・吉野さん」がついていてくれる。更に遠くレジ脇には島田さんが居て。「そう、この感じ」との思いが何度もよぎった夜であったと思う。こちら聴き人もその嬉しさを確かな音像の形で存分に共有させて頂けて、この上なく幸せなひとときであった。