秋の月


通り過ぎていく雲の合間に、何となく冷ややかで謎に満ちた月が、

黙して空に浮かんでいた。頭の中では、美しい音楽が流れていた。

道を歩きながら、先日のホールの空間を思い出す。

演奏前、誰もいない広い客席を、大きく息を吐きながら歩きまわっていたっけ。

久しぶりのステージのピアノの前に立つ時の感覚は忘れていなかった。