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執筆者の写真yoko kobayashi

分かってくること


​音楽をやり続ける上で(人生においてもそうなんだろうけれども)、

歳を重ねることにも、良いことと悪いことがある。

良いことは、自分には到底できないこと、どう転んでもかなわないことがはっきりと分かること。

それと、自分にしかできないことが分かってくること。

分かってくるのはいいけれど、

残念ながら、この自分にしかできないことが、いつ何時でも出せるような心の環境を維持するのは難しい。

いや、維持するようなものでもなく、意識するようなものでもないのだろう。

当たり前のように、演奏が終わったら、音の中を浮遊してたかのように、

後になって思える状態が一番いいのだと思う。

過去に何度か経験したことであるが、演奏中、自分が出している音を聴いて、

まるで他の人が弾いているのを、私はただそれを聴いているだけのような感覚だったこと、

そしてそれがたいへん心地よく、普通のことのように時間が過ぎていくこと。

経験できたことは、私の財産です。

以前に、大先輩の言葉で、「今日は、果たして音が出せるだろうか」といつも不安になると。

何も浮かんでいないのに安易に音は出せない、今日はイメージが広がるのだろうか、

今日は何にも浮かばないのかもしれないという不安です。

イントロもエンディングも決まっていない即興音楽ということもあり、

本当に恐怖にしか思えない日は、どうしてたっけなぁと思い返し、

2度のpiano solo 録音での音に出ている、感じる心の違いを考え、

​しばらく悩んだら、すっかり忘れようと思う。


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