電車を降りて改札を出ると、雨が降り出していた。病院まで急ぎ足で。横断歩道で立ち止まると、後ろから「どうぞ、お入り下さい。」と女性が傘を差しだしてくれた。こんな親切な人がいるんだと、心温まる体験をする。赤信号でこの横断歩道で立ち止まるほとんどの人は、目的地が同じなのだろう。おそらく仲間意識を持ってくれたのだと思う。全ての条件がそろっての偶然の出来事とも言える。
師匠・辛島文雄氏が癌で亡くなられて一年が経とうとしている。友人や音楽仲間も癌で旅立っていった。私は2015年に癌を患い、しかしながら運良く早期発見で、10日間の手術入院で済んだ。与えられた命に感謝しなければならない。2020年までは、年に2度の様々な検査を受けるため、病院を訪れるたびに、たくさんのことを思う。音楽のこと、生きるということ、ジストニアのこと、同じ時代に生きている人々のこと...。明らかに心身共に健康を取り戻しつつある今に感謝し、大事に人生という道のりを歩いていきたいと思う。