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小林洋子pianist

電話


電話口から聞こえてくる声は、とても穏やかでおばあちゃん特有のかわいい声だった。

何度も何度も「ありがとう。」って。

母は80歳過ぎてから初めて携帯電話を使うようになり、遠くに住む母とよくメールでやりとりしたっけなぁ。でもその携帯も視力を無くして使えなくなり、今は施設の部屋に固定電話を通してもらっている。電話をかけてコール音が鳴ってる間、狭い部屋にせよ、

母はどうやって電話のところまで行くんだろうと考えながら、ジッと待つ。

「もしもし?」.....無事繋がるとホッとする。

妹・弟と一緒にプレゼントした「体幹矯正チェア」なるものも快適に使っているようで、

ゆったりと座って心地よくテレビをみるのが楽しみだと言う。

「テレビを見る???」と不思議に思ったが、まぁおそらく音声だけで楽しんでいるのでしょう。その辺は突っ込みを入れないでおいた。

大変ありがたいことに、私が知らない間に、CD「Nearly Dusk」をたくさん購入し、

親戚他いろんな方々にプレゼントしてくれたらしい。付き添う介護士さんも大変だ。

母ひとりでCD購入は出来ないはずなので、全ては母の近くに住む弟が段取ってくれたのだろう。ネット通販しかない。

母にとっては、いくつになっても子供は子供、親孝行も何もしていない私だけれど、母はずっと応援しつづけてくれているんだと、胸も熱くなる。

「ありがとう。」は私が言う言葉なのに、母は何度も何度も「ありがとう。」と言っていた。

母は、私が数年もの間音楽に関わっていなかったこと、知る由もないが、私が元気で、現在も意欲的に音楽をやっていることを知り、少しは安心してもらっただろうか。


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