2022.09.02東中野セロニアス


この日は、新たに挑戦するピアノトリオでのLIVE初日でした。



寺本達也氏のライブレポをご紹介いたします。

寺本さんの文章は大好きです。

泣けて笑えて、愛があるし面白い。

いつも楽しく拝読させていただいています。

.....................................................


【新規洋子新曲被害者2名、累計10名。】

やられた。 アンコール、このピアノトリオ、 「Both Sides Now」を演った。 ピアノのイントロでふわりとメロディが顔を出した後は、 曲の人生観は、エレクトリックベースの音に委ねられ、 小林洋子さんのピアノは、病気から復活を遂げ、群衆の前のステージで歌った、 あのジョニへの賛歌のように荘厳に弾かれた。

感受性の塊みたいな人が、「他人の曲を弾く」ときに生まれる、 向き合い方の凄みに泣けてきた。

高橋さんの曲への入り込み方が、 バンドのサウンドを作っていた。


一年ほど前、 ライブで聴いた楽曲に感激したボクは、 その夜中、洋子さんに、小池勇輝さんや高橋将さんのYoutube動画を、 送りつけて「エレベとの共演聴きたいです!」 とメッセージを送ったことがあった。

洋子さんの曲は、実は、ジャズジャズしくない。 ベースラインにアイディアが注がれ、 ジャズでは軽んじられる「イントロ」にも、 世界観があって、落語のような味わいよりも、 コントのような計算された交錯がカッコいい、 と思って、メールしたんだと思う。


二か月ほど前、久米雅之さんとの共演の話を聞いた時、 なんとベースは高橋将さんだと、洋子さんが言った。 ワクワクして、ペトルチアーニのトリオとか想像した。 SwingよりもGrooveの上で鳴る、 洋子さんのピアノ。 ポール・ブレイやデニー・ザイトリンを彷彿させる、 決してBlacknessの風俗としのモノではない、 純粋な創作としての攻めのピアノが聴こえた。


予感は当たった。 「続けて欲しい」と心から思えるバンドに、出会えるって、幸せだ。


2022年 No.42 9月2日(金)東中野セロニアス 『小林洋子トリオ』 小林洋子(p) 高橋将(eb) 久米雅之(ds)


もちろん、30年ぶりに共演する久米さんのドラムと、 初共演の高橋さんのエレクトリックベースとのトリオ。 「完成形」ではなかった。 みんなが譜面とにらめっこになると、 演奏は委縮していた気がするし、聴き合えない分、サウンドしない。

洋子さんから当日のセットリストの譜面が、事前にメンバーにはメールで送られたらしい。

予習時のイメージが一曲目の洋子さんのオリジナル、 「Hard Worker」から聴こえてくる。 久米さんのバスドラのキックが大きく鋭い。 すたすたとさばきで鳴らすいつもの感じより、 ざくざくと時を刻む感じがカッコいい。

高橋さんは、指がつるんじゃないか、 と思えるぐらい細かい音符を献身的に送り続ける。 二人のアイディアが呼応してる。


二曲目の「In Her Case」。 彼女を思い出や取り巻く環境をメロディとして、 高橋さんのアタックを消したエレベ音に託し、 洋子さんは、大股で歩く彼女の歩調を弾いている感じ。 切ない心情と闊歩する足音が交差し、 風景が流れていく。いい演奏だわぁ。


洋子さんが高橋さんのために書き下ろした、 「It's Show Time」。 小さいブロックがエレベで、 どんどん積み上げられる。 絵描きの久米さんに捧げた 「Drawn in Sepia」は朧に風景が滲んでいく感じ。

この二曲、まだ二人は「最適解」を得てないけど、 そこに探りを入れてる感じが、ドキュメントとしてたまらない。

ファーストの最後は久米さんの「Red and Blue」。 譜面を見ない久米さんに生まれる余裕から、 そこここに技が散りばめられ、爆発する。 やっぱりすげぇ、この人。


2ndは洋子さんの名バラッド、 「La Consolation」と「その儚さ」、 しか曲名が分からなかったけど、 後半、ぐんぐんと速いテンポの曲が演奏される。 速いテンポと洋子さんの右手が戦う。 その右手に、ドラムもベースも襲い掛かる。 このドラマがカッコいいのだから、 ボクも相方も大声を出してしまった。

アンコール前の曲などは、 変わった部分にアクセントが配置された曲で、 このアクセントに向かって三人の心拍数が、 びたっとハマり始めて、アクセントの後に「無音」が現れて音楽になっていた。 (※後からうかがったら、「Full Full Company」と「Blot, Blot, Blot」  だと教えていただいた。  Blotって、お肌のシミ?食べこぼしのシミ?  たしかに、どっちもあせるわ。(笑))))))


様々なプロジェクトが同時に進行してる、 小林洋子さんに、また新しい宝物のようなバンドが生まれた。 で、また、新しいメンバーに、 新しい譜面がメールに添付されて届く、 という地獄が始まることを、 久米さんと高橋さんは知らない。

「小林洋子からのメールは開封するな」 という心理的セキュリティアラームが鳴る日も近い。

小林洋子の進む道に、ジャズミュージシャンの屍が次々と…

怖っ!


(寺本達也)

.........................................................................

2022.09.02 東中野セロニアス演奏曲目

小林洋子pf 高橋将eb 久米雅之ds


1st.stage

  1. Hard Worker

  2. In her case

  3. It's Show Time

  4. Drawn in Sepia

  5. Red and Blue(M.Kume)

2nd.stage


1. When it falls in drops(雫となって落ちる時)

2. Full Full Company

3. La consolation

4. その儚さ

5. Blot, blot, blot


encore : Both sides now(Joni Mitchell)


1-5, encore 以外、composed by Yoko Kobayashi



閲覧数:25回0件のコメント

最新記事

すべて表示