9/13 オーディエンスとして

目を開けると、壁にはしっかり「アケタの店」と書かれている。ここはやっぱり西荻窪だ。 目を瞑って聴いていると、一つ一つの音の出来事が、演者の「人生」や「夢」を形作っていく、今こうして思い出すだけでも目頭が熱くなる、そんな昨夜のアケタの店でした。

2022.09.13 西荻窪アケタの店 マイク・レズニコフ(ds)Quartet 大山日出男(as) 関根敏行(pf) 吉野弘志(cb) 「Ecaroh 」から始まったこの日、音が出た瞬間に、「あぁ、マイクさんは演奏始めたその瞬間、心の中はもう生まれ育ったニューヨーク・マンハッタンに飛んでる」そう思えた。 そのプレイは、私が30年ほど前に数回ご一緒させていただいた時の印象よりも、より躍動感に溢れ、強力に美しいレガートを聴かせて下さった。圧も凄い!何だか歳を取ることを知らない人だ。 満面の笑みで、時には顔を真っ赤にして演奏するそのお姿は、正に少年のようでした。 何とチャーミングなんでしょう。 躍動感とスピード感、美しさとカッコよさ、後はブルーズ(ズって濁る方の感じ)だよね!みたいな真のジャズの深い味わい、楽しさを体感させてもらった気がした。 アケタの店でしか味わえない鳴り・響きなんだとも思う。 感動の2時間だった。

一曲目の「Ecaroh」はHorace Silverの曲で、Horace を逆から読んでエカロゥ?なんだそうだ。 (吉野さんが発音が違うってマイクさんに優しく突っ込み入れてました笑) ずっと目を瞑って聴いているとこのバンドに圧倒され、危ない地区に連れていかれそうになるので、2曲目(Beatrice)からは音を見据えることにする。 saxの大山さんは、ずっと正面(つまり客席の方)を真剣に見据え、私はその音に集中しつつ、音に負けじと何故か大山さんを凝視する。

すると時々目が合ってるんじゃないかという錯覚に陥り、怖くなって思わず目を反らす(笑)ことも度々。 最後にご挨拶させていただいたら、微笑んでいただきホッとする。その笑顔はどこかピアノの吉岡さんに似ている気がした。 音楽がそう思わせるのか、あ!でも吉岡さんの笑顔が大山さんの笑顔に似てるのかな。

吉野さんは、自宅療養の日々も、ず~っと練習してたんだろうなって優に想像できる。何故なら音曲の貴公子だから笑 荘厳な音は圧巻です。prelude to a kiss のarco奏法も深くて美しい。 沈黙が映し出されるような瞬間もありました。 アケタに着いてすぐ「吉野さん、心配してました、後遺症もないですか?お元気ですか?」って言ったら、 「大丈夫だよ、小林さんより全然元気だよ!」って。吉野節も健在。 (私元気なのに!) そして、ずーっと以前に少しだけ聴かせていただいていて、後はマイクさんのアルバムや同じくdrummer久米さんの2枚のアルバムで聴かせていただいていたピアノの関根さん。 そのプレイにはもう流石だなぁって感銘を受けていた訳ですが、 実際に聴けた昨夜、既に2曲目の「Beatrice」、saxのメロディーの向こうから聴こえてきた美しい音色に心打たれ、もうそこから涙が止まらなかった。

何故こんなに泣けるんだろう、ただの美しい和音だったら私も弾けるはず、何でこんなに泣けてくるの?って。 伸びた和音の中に潜む躍動?みたいなものかもしれない。

演奏中は客席は暗いしマスクしてるし、誰にも見られることはないのをいいことに、 もう放っておくことにする。 関根さんのご機嫌のsoloになっても、涙は止まりませんでした。 普通だったら、「イェーイ!」ってなったりめちゃ楽しいと感じるであろうところも、 感動で涙がでてくるのだけれど、今も何故だか分かりません。

池に石をポッチャンと投げたらすぐ沈みますが、平ぺったい石を回転させて浅い角度で池に投げると、石はスーッスーッって遠くまで飛びますね。 まるでそのように、関根さんの音は深くずーっと向こうまで届く、いわゆるそば鳴りではないことも魅力です。 そしてその鳴り続けている音に躍動感がある。

関根さんってお話するととても柔らかい感じの音楽家らしい方なんですけどね(ということを昨日初めて知る私)、 ところが背も高いし、どこかのマフィア?って佇まいで、こんな人と町ですれ違ったら恐いだろうなぁって感じ。 ところが、ピアノを弾かせたらその音楽はとても素敵で、、、 なーんていうギャップにやられたとかそんな陳腐なことでは全くないのです!

考えられることは、冒頭で少し触れたように、恐らくその音楽には、一人の人生がいっぱい詰まっていることは確かなのですが(ベテランのミュージシャンを聴くとそう感じることは多々ありますが)、ただそれだけではないような気がします。

やはり、楽譜には書けないリズムの躍動とか、譜面にしたら休符になる箇所にも、

何かが表現されている、ようなことなんだろうな。


音楽って、譜面に書けないようなことが一番難しいんです。

それと音がないところをどう表現するか。

永遠の課題だ。

昨夜の演目は、他にモンクの I mean you, カーラ・ブレイの何とか何とかblues(すみません、良く知っている曲なのですがタイトルど忘れです)等々、 musician作曲の曲が多く演奏されました。

また素晴らしい音楽が聴けて、オーディエンスになれたとても幸せな日でした。

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