この少年(といっても小学1~2年の男の子)は、両親に内緒で実験をしていた。
非常にIQの高いこの少年は、自信満々で火星への信号を送り続けているのだが、
そのクールな表情からは、とても心の奥にある高揚感や優しさなどは感じとることはできない。そう、実験とは火星人との交信なのである。
時を同じくして火星では、無邪気に、信号送りの遊びをしている子供がいた。
いつもの遊びだ。
火星在住ということは、つまりは火星人である。
年の頃は、地球の少年と同じ位なのだろう。
交信などという高度なとり行いを、まるで趣味であるかのように一人遊びしている。
そのあどけない表情からは、優に子供らしいはずむ心を読み取ることができた。
もちろん本人はこれが「交信」というものだとは認識していない。
いつの頃からか、自然に身についた、彼にとっては地球に存在する水鉄砲、で遊んでいるようなものだ。
!!!!!、するとそのあどけない表情は、一瞬にして驚きの表情に変わった。
どこからか、どこか遠くから、とてつもなく遠いところから、何かを感じ取ったのだ。
「開いた口が塞がらないとはこのことか」を体験する。
地球の少年は、確かな感触に思わずほくそ笑む。
冷静に、遠い星の見知らぬ人物と心がつながった喜びを内に潜めて.....。
交信という会話によって、相手は自分と同年代の男の子であろうことも想像できた。
遠く離れた二人は、親にも言えない秘密を共有する。
なぜ秘密なのかは二人にもはっきりとは分からないが、
ただ、誰かにばれてしまうと、その物凄く楽しい遊びを阻止される・禁止されるに違いないこと、子供ながらに強く感じ取っていたに違いない。
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CD「Nearly Dusk」の一曲目に収められているWaltz for Mars
最初はただ単に、「地球のお隣さんだからご挨拶でも」と思って書き始めた曲。
けれど書き進める内に思いは広がり、これは火星人と交信したいと.....。
2018.12,13 レコーディングの日、このような物語が確かに繰り広げられたことを、
はっきりと覚えています。リリースまでには諸々の作業のため何度も聴くことになる訳ですが、この曲を聴いては一人でウケていた訳です。
エンディングに於いては、時間を忘れて交信遊びに夢中になり、気付けば辺りはすっかり夕暮れ時(ここでも正にNearly Dusk)、地球と火星の男の子は、家に戻らなきゃ「じゃぁまたね!」と確かに言い合っている。
今後ライブでは、どのような物語が展開されるのか未知であると同時に、
非常に楽しみにしている曲の一つでもあります。