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寺本達也氏ライブレポ

執筆者の写真: yoko kobayashiyoko kobayashi

【小林洋子さんの「イッチャッテル感」凄いっす。】


なんか、いっぱい感じちゃったので、

長くなります。


正直言うと、

つの犬さんと多田誠司さんと加藤真一さんの共演、

ということに狂喜して速攻予約した。

このライブのピットインの告知文は、

ちょっと小難しい感じで、

今までの小林さんのライブ写真やレヴューも、

硬い、「現代音楽」風が多くて、

このメンバーじゃなければ聴く機会が

なかったかもしれない。

しかし、

メンバーで「ワケわかんない❗」って思えた。

「なんじゃこれ❗」がイコール「最高❗」のボクには、

「この三人がフーッと頭に浮かんだ。」

と言う小林洋子さんが、

それだけで「好きなアーティスト」になってしまう。


プロフィールを見ると、

音楽を志す学生として、山本直純氏、三枝成彰氏に、

師事しておいて、辛島さんに師事して、

渋谷オーケストラ、じゃがたら、上々颱風、

さらには生活向上委員会に絡んで、

古澤良治郎さん、外山明さん、ポンタさん、

吉野弘志さん、早川岳晴さん、山元恭介さん、

なんと伊藤啓太さん、石渡明廣さんとも共演!

向井滋春さん、津村和彦さん、永田利樹さん、

望月英明さん、藤井信雄さん、堀越彰さん、

鈴木徹大さん、加藤真一さん、小山彰太さん、

角田健さん、青木タイセイさん、池長一美さんと、

中央線の深層部に絡んでくる。

かと思えば、またまた、

画家や振付家とのコラボレーションや、

「クラシック・イン・ジャズ」、

「コンテンポラリー・ジャズピアノ」という著作で、

アカデミックな活動をしたりする。

小林さんの、あの、優等生ないでたちの中には、

その場その場の出会いとひらめきで、

『超節操なく』、それは『表現にただただ貪欲』な、

アーティストの顔が見えてくる。

このあたりが、ちゃんと語られてないなぁ、って思う。

ボクが、ビートルズやマイルスや、

ポール・ウエラーやデビッド・ボウイや、

プリンス、ハル・アシュビー、アラン・パーカーが好きなのは、

いたって『節操がない』からだ。

それに、時折、女性アーティストから匂う、

『ビジネス臭・自己プロデュース臭』が、

全くしない。

あまりアカデミックに語らず、観ずに、

小林さんの『純粋芸術家』度合の、

「あ~、イッチャッテルワ、この人」感を、

きっともっともっと楽しむべきなんだ。

と、この夜まで、小林さんを、

聴いたこと無いのに熱く語るボク。。。(笑)


11月13日(金)新宿 ピットイン

『TEAM TUCKS』

小林洋子(P)

多田誠司(As,Fl)

加藤真一(B)

角田 健(Ds)


ライブは、Encの「Keep in Mind」で終わった。

なんだか知らないけど、この懐かしい感じのする曲と、

この日のライブの音が振り返られて、

涙が出てきた。

この日のメンバーたちは、

小林さんがコロナ自粛の中で、ふと頭に浮かんだ、

と言っていた。

何所を切っても、ジャズ血中濃度の高い血が噴き出る、

そんな多田誠司さん。

きっと、

「とにかくとことんジャズ魂ぶつけてくれる子」

として呼ばれてる。

フリーからスイングまで、

凄く芯のあるベースの音で音楽の中心にいる加藤真一さん。

「私のピアノと曲に寄り添って、真ん中にいてほしい子」

という感じかなぁ、きっと。

どちらかというと、全メンバーの中で、

ジャズから少し遠いところにいるけれど、

リズムへのこだわりの狂人度合と、

『歌詞』や『物語』に真心で向き合うつの犬さん。

「歌詞の無い私の曲に詩とドラマをリズムでつけてほしい子」

という存在かもしれない。


『呼ばれた子どもたち』と小林さんのライブ。

いきなり、ちょっと難しい展開のある「3/4忙中」、

という曲から始まった。(漢字違うかも)

でも、

小林さんのオリジナルは、どの曲も、

親しみがわいてスーッと感情が寄り添えるのだ。

現代音楽家、のようなイメージを持っていたボクとツレは、

とても驚いた。

それでいて、「つまらない」と思ってしまうような、

簡単なものにも聞こえない。

共演者をやる気にさせる曲、なんだと思う。

一曲、マンデル・ロウの、

「A Shadow of Your Smile」をやった。

とんでもないワンコードのアレンジで、

つの犬さんと加藤さんは、どこをどう聴いても、

ファンクだ。

そこに、そのままの美しく物悲しいメロディを、

ほぼ原曲の譜割りで載せてくる多田さん。

最高に「気持ち悪い」のだけど、これが癖になってきて、

「またあれ頂戴」ってこっちが思うと、

全員がユニゾンで攻めてきたりする。

さらに多田さんのソロの時などは、

マーカス・ミラーとケニー・ギャレッとのいる、

マイルスバンドかと思うようなサウンドで、

まぁ、ひっくり返った。

マイルスも、Chuck Brownのところから、

Ricky Wellmanを引き抜いたから、まさにつの犬さん。

他にも、

複雑な気持ちが曲になったような「Primavera」。

レゲエ ファンク・バラッドの顔が見え隠れする「Genei」。

「Coin Factory」はこのバンドのために作られたような、

おもちゃ箱をひっくり返したような曲。

6角形の中を三角形がコロコロ転がるような「水泡」。

「霜枯れどきの」はつの犬さんのドラムにぶつけてくる、

小林さんの右手のコードがグサッとこちらに迫る。

「Ultra Maline Road」は、

小林さんの頭に浮かんだ映像を、

バンドで丁寧に音像にしていく作業が心に迫る。

「Soar」の多田さんは、もう、ほとんどケニー・ギャレッとか、

ビル・エバンスをねじ伏せる音のスピード感で、

これは、このバンドの名物だ。

そして、

アンコールの「Keep in Mind」。

きっと、コロナの時間に、

「表現」が大好きで「いろんな絵筆」を探し歩いてきた、

『少女』が、

「みんな自粛したり気がめいってる時だから、

もう、遊んじゃおう。」と思ったのじゃないかと思う、

『Team Tucks』という幻のバンドという遊び。

この夜、それがぐんぐんと楽しくなっていて、

小林さんという少女が、「ありがとう」と言ってるように聴こえた。

そして、このことって、

きっとメンバー全員にとってデジャヴみたいなもので、

それぞれがすごしてきた時間も、

ここに注がれてるような気がする。

小林さんは、

メンバーの個性も変化も理解していて、

全てが想定内。

今、「Team Tucks」は、

メンバーそれぞれが、

小林楽曲への献身がメインの演奏なのかもしれないけど、

きっと、

小林さん以外の三人が、それぞれの体内のリズムを、

理解して面白がるとき、

なんだか凄いことになりそうな気がする。

そう、BANDになった時、凄いことになる。

「ひだひだ団」はベテランぞろいなのだけど、

そこに「伸びしろ」を与えてしまうのは、

小林洋子さんの「少女の母性」だなぁ、って思う。

 
 
 

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